前回の「カウンセリングのすすめ」続きです。
私の体験談をお話しします〜
私がカウンセラーさんに最初にお世話になったのはアメリカで交通事故を起こした時でした。何年も経ったのでこうして語れますが、長らく本当にトラウマのような出来事でした。
⚠️⚠️⚠️ 同じような経験がある方、トラウマがある方は自衛をお願いします! そんなに怖い結末ではない、つもりですが。
背景情報
私はアメリカの大学院に通ったので5年間アメリカに住んでいました。車がないととても不便な小さな街だったので、アメリカの運転免許を取得し、中古車を買い、大学院も買い物も全て運転して行っていました。
私の住んでいた州の高速道路は制限速度が時速75マイル(時速120キロ近く)でした。道がものすごく真っ直ぐなので、全然速く感じないのが、また恐ろしいところです。アメリカで車に乗る人、本当に気をつけてほしい…。
その時…
ある日、学会の帰りで夜中に走行することがありました。
はしょって言いますと高速道路を歩行していた歩行者にぶつかったということになるのですが。右から来ていたので全く見えなかったのですが、正面ではなかったのが幸いして、相手方はケガはしたけど命に別状はなく、だったそう。それは後から知ったので、その時は、高速道路で人をはねて無事なはずがないと思ってもうパニックでした。
その後は、警察を呼んだり(初めて9−1−1を押したのを今もはっきり覚えています)、病院に連れて行ってもらって私が怪我がないか確認してもらったりしながら、「一体何が起こっているのか…?」夢か現か分からない状態でした。
車は警察が検分のために移動し、事故だったということで深夜2時くらいに家に返してもらい(しかもパトカーで1時間くらいかけて送ってくれた)、どっと疲れて寝たのですが、あまり眠れず、当然ながら翌朝から不安と後悔とショックが一気にやってきました。
学期の真っ最中で、授業も普通にありましたし、博士課程の中間試験(予備審)も控えていたのでとりあえず行ってこなしていましたが、心ここにあらずといった感じでした。
数日泣けませんでした。ショックが大きすぎると、泣けないんですね。
なんかとにかくもう、受け入れられないのです。
本当なの?と。
それから、土日が来ることになり。授業もない、人にも会えない。「あ、ヤバいな。」と瞬間的に思いました。一人だと気がおかしくなりそう、と。
大学の人に伝えるのも怖かった。何て言われるか分からないし、そもそも一言その話に触れたら涙が溢れそうだった。幸い、大学には学生・職員のためのカウンセリングサービスがあり、学内で無料で受けられるということを知っていた。
わらにもすがる思いで「Crisis」という特別枠で申し込んだ。「Crisis」枠は優先度が高くなるということを直感的に察知したのだと思う。ここでの私の自分を守る決意を褒めたい。
カウンセラーさんには得意分野がそれぞれあり、「交通事故」と書かれたカウンセラーさんがいました。
40分くらい待って、カウンセリング室に通してもらいました。
カウンセリング室にて…
カウンセラー部門全体の雰囲気が、すでに、リラックスさせる、優しい、穏やかな雰囲気を持っていました。カウンセラー室もそんな感じで、柔らかな日光が注ぎ、カウンセラーさんと45°の角度(正面から向かい合うより落ち着いて話せる角度です)で話せるようになっています。
カウンセリング室に入って、その安心できる雰囲気を感じた瞬間、涙が滝のように溢れてきました。それまで泣けなかったので自分でもびっくりしました。まさに堤防が決壊したような感じでした。
カウンセラーさんは、慣れた様子で、「大丈夫ですよ。」と言いながら席に案内してくれ、私が落ち着くまでしばらく待ってくれました。
最初に、「あなたの相談内容は他言しません。カウンセラーと会っているということも知られないよう、外であなたに会っても、あなたが先に挨拶して来なければ、私からは挨拶しません。」など守秘義務の徹底を話してくれました。しっかりしたシステムですね。さすがアメリカ。
事故のことを詰まり詰まり、全部話して、カウンセラーさんは、ただ静かに、うんうんと聞いてくれました。
「ショックでしたよね。自分も、家族がそういうことに遭ったことがあるから、よくわかります。」って、うるっとしながら言ってくれました。この人ほんとに、相手の感情を感じちゃう人なんだろうけど、それが彼を凄腕のカウンセラーにしているし、同時に、すり減る仕事でもあるだろうなあ、なんて感じ入ったものです。
もちろん、「信じられない!」とか大げさな反応や、「深夜に運転するなんて」などの批判とかは一切無かったです。もし、私に過失のある事故だったとしても、これは絶対に言ってはいけませんし、カウンセラーは言わないはずです。自分が悪い、って後悔の念に押しつぶされているのは当人なのだから。
私は裁判を起こされるのがとても怖かったし不安だったのでそれも伝えました。アメリカの裁判文化は極端ですしその費用も膨大です。カウンセラーさんは、「裁判については、相手方次第というところはあるけれど…。」と、期待は持たせない冷静な視点も持っていました。「でも、普通に考えて裁判しても負けるだろうから、してこないとは思うけれどね。」
「学業は今どんな感じ?」「指導教官は理解がありそう?」「休みたい?それとも…」と、いろいろと聞いてくれて、私がこの精神的にとてもつらい事故直後の状態を何とか乗り切れるようにいろいろと確認してくれました。
最後に、「土日になるけど、もし何かあったらメールアドレスにいつでも連絡して。僕は土曜日の夜に一度だけメールを確認するようにしているから。」と、ちゃんと自分の境界線(この時間だけ)を保っていてそれを伝えられるのも、さすがプロのカウンセラーだなと思いました。
とりあえず、話せてとても楽になりました。不安はまだありましたし、状況としては何も変わっていなかったのですが、とても気分が落ち着きました。そして、「何かあったらまた相談できる、一人じゃない」と思えるのはとても心強かったです。話せば楽になるって本当なんだな、と身を持って実感しました。
カウンセラーさんとは、状況報告も兼ねて、その後何度か話しました。そのたびに、「ああ、落ち着く…。」と思えて、カウンセリングを利用して本当に良かったと思っています。
本当に、一人では乗り越えられない出来事でした。
後日談
それから数週間は、予備審を受けたり、弁護士にも相談したり、車の処理対応をしたりしながら過ごしました。事故の全貌も明らかになりました。相手方(20代の学生ということでした)は、徹夜明け?の眠い状態で高速を運転していて木にぶつかり、意識が朦朧としたままフラフラと車から出て歩いていたところ私の車にぶつかったということでした。もう信じられない話ですが、アメリカではこういう極端なことが本当に起こります…。彼のお父さんと話したという警察の巡査が電話をしてくれて、「とりあえず生きてる、訴訟などは起こすつもりはない、息子が悪かったから」と言っていたと伝えてくれました。高速道路での事故ということを考えれば、考えうる最高に幸運な結末だったと思います。
たまたま木にぶつかってフラフラ歩いていた人がたまたまそこを走って来た私の車にぶつかるってどんな確率??と思いますが。その事故までは、私は日米の運転歴が通算10年くらいあって、無事故無違反だったので、衝撃でした。
運転に対する見方は変わりました。運転は今もちょっと怖いし、できればしたくないです。ちょっとした判断ミスが大怪我につながると思うと、リスクとリターンが見合わないなと思うようになりました。昔は毎日運転する田舎に住んでいたのですが、今は運転しなくていい都会に住んでいて、本当に助かるなあと思っています。
そんな私のカウンセリングとの出会いでした。