9.21.2026

『結婚の社会学』/阪井裕一郎

慶応義塾大学の阪井裕一郎先生は家族社会学が専門で、「結婚の常識を疑う」が本書の問題提起。

結婚の常識って時代によって変わってきたことがよくわかる。

なんだかんだ、家父長制の家制度を維持するためという目的が一番大きい。女性は男性の「家に入って」、一番下の地位。昔は「離縁」も自分からはできなかった。でも、男性側の家族から、子供ができないなどの理由で「離縁」されることはあった。不妊の原因は男女ともにありうるのに、なんという不条理。

同棲の普及についても面白かった。同棲と事実婚はほぼ地続き。私のアメリカに住んだ経験でも、パートナー同士で同棲している人たちが本当に多かった。ただ、理由が違うのだそうだ。

・欧米で同棲を選ぶ人たちは、宗教から距離を置きたい、が理由。

・日本で同棲を選ぶ人たちは、苗字を変えたくない、が理由。

日本では結婚する際に、二人のうちどちらかが苗字を相手と同じにしなければならない、という不条理なルールがある。95%のケースで、女性が苗字を変えているそう。古い民法がそのままになっているのだ。誰得?といえば、もちろん男性得だ。政治家の性別割合が、そのままこういう所に反映される。

苗字を変えることによる不都合はたくさんある。自分の慣れ親しんだ苗字が突如使えなくなる。手続きに行くのも面倒くさいし時間がかかる。姓が変わることで、「結婚した」または「離婚した」というプライベートなことが否応なしに職場などで知られることになる。そしてそういった不都合は、二人のうちどちらかだけ(95%のケースで女性)に降りかかる。これを不平等と言わずして何と言うのか。

「夫婦別姓」という言葉を疑ってみる、という章も興味深かった。

事実婚を選ぶ人たちは、何が何でも違う姓にしたいわけではないのだ。自分の苗字を変えたくないという意味での別姓を求めている人が多いのだそう。

つまり、お互い苗字が佐藤なら、お互い佐藤のままでいて、別姓にするためにどちらかが新たな姓を名乗りたい、というわけではない。

「『別』という言葉が抵抗感を引き起こしている気もする」とインタビューに答えた人は語った。確かに。

*           *           *

選択的別姓に関する反対意見への反論も、極めて理路整然としていて面白かった。今度何かの機会に使おう。

(1)夫婦同姓は日本の伝統(?)

・夫婦同姓は明治民法によって成立した。比較的新しい。しかし、歴史認識はある制度を正当化する根拠にはならない。「伝統だからそれが正しい」は理由にならない。

・問題視されているのは、「夫婦同姓を強要する制度」。同姓と別姓のどちらが「正しい」か決めることはできないし、別姓を求める人たちは「正しさ」を主張しているわけではない。(「正義の反対はもう一つの正義」。)ただ、「別姓にすることも、同姓にすることも選べること」を法律婚の枠組みの中で認めるべきだと主張しているだけ。

(2)子どもがかわいそう(?)。親子で姓が違うと子どもの不幸や不利益に繋がるという主張。

・なぜかわいそうなのか。なぜいじめられるのか。いじめが起こるのは、社会が「別姓であることがかわいそう」と決めているからに他ならない。いじめるのが悪いのに、いじめる側の論理を支持するのも不可解。

・離婚率が3割で、その8割超で母親が子供を引き取っている。つまり離婚で子供も苗字を変えることを余儀なくされる。いじめなどに繋がりかねない。子供の福祉を考えるなら、女性ではなく男性が苗字を変えるほうが理にかなっている。

(3)「旧姓の通称使用で事足りている」(?)

・足りていない。半数の日本の企業が認めていない。そもそも、「旧姓の通称使用」は、別姓の選択肢がない日本において、当事者たちが妥協案として勝ち取った権利。それなのに、選択的夫婦別姓に断固反対する人たちが、「通称使用で事足りる」というのは筋が通らない。


そもそも「選択的」なのだから、すべてのカップルに別姓を強制するものではない。同姓にしたい人たちは、同姓にすればいい。

選択的夫婦別姓に反対する人たちは結局、

「今の慣れている制度を変えるのが嫌」

「男性優位の社会が壊れそうで嫌」

「伝統的な家族の価値観(家父長制度、つまり女性が家の中で二番手に置かれている状況)が壊れそうで嫌」

「女性が権利をもっと主張するようになりそうで嫌」

「手続きが煩雑になってシステム更新しないといけないから嫌」

という、現状自分に有意な制度を維持したい、もしくは面倒くさい、っていうそれだけの理由で反対しているのではないか。それによって不都合を被っている人がいることは考えず。

結婚後に姓をどうするかというのは、多くの男性にとって他人事。どちらの姓にするかがくじ引きで決まるとしたら、男性からも「選択的夫婦別姓」の希望が出てくるのではないか、という思考実験も大変面白かった。

欧米では結婚後も姓を変えない人が多い。それが当たり前になれば、同姓を強制する制度にはすごく違和感を感じる。

私たちは、安易に為政者の「これまでと同じ『安心な』政策」に乗らないよう注意しないといけない。

*           *           *

そもそも、人にはケアを必要とする年代があるが、そのケアの役割を一方的に担わされてきたのが女性だった。だから、子供の世話、夫の世話、高齢者の世話で、女性はケアばかりしてきた。キャリアなんて持てなかった。家父長制度は「家」を守り繁栄させていくための制度で、個人の自由や自己実現なんて考えられていなかった。(男性だって、長男なら家督を継ぐことを期待され、職業選択なんてできないし、次男以降は、いくら家督を継ぎたくてもできなかった。)

でも、今はそういう時代ではない。個人の時代だ。それにも良い点と悪い点はある。しかし、今更個人の自由と尊厳を著しく侵害するような時代には戻れない。ケアを親族の女性だけに押し付けてはいけない。そういう前提で、ではどうするかを考えないといけない。

ということで、そもそも結婚の定義を広げてもいいのでは、という話もあった。

例えばアメリカで、60代の仕事はあるが家を失った男性と、80代の、持ち家があるが一人での生活に援助が必要な男性、その二人の友人の利害が一致して、彼らは同性婚の制度を利用して結婚した。配偶者となれば、莫大な相続税無しに、家を譲ることができるからだ。

「同性婚の悪用」などと批判されたらしいが、では男女ならいいのか? 結婚する二人が恋愛関係にないといけない理由は何か? なぜ、ケアし合いながら一緒に生きていこうと決めた二人が、経済的恩恵を受けるために結婚してはいけないのか? そもそも、なぜそういった経済的恩恵が、幸運にもパートナーを見つけた人だけに与えられるのか。いろいろとツッコミどころがある。

結婚という枠組みで、女性に担わせる形で対応していたケアの問題を、社会全体で担う仕組みが必要なのだろう。

これについては エリザベス・ブレイク『最小の結婚』という参考書があるらしいのでぜひとも読んでみたい。


自分が今享受している自由って昔は当たり前じゃなかったんだな。じゃあ、わざわざ自由を制限するような、「家に入ってケアを担う」役割を、やりたかったらすればいいけど、したくないんだったら、しない自由があるんだよな。とかみしめた。


こういう本を読むと、社会学いいな、本格的に学びたいな、と思ったりする。





「alright」でいい。感情ジェットコースターに乗っていない友達の言葉にハッとさせられた話

最近新しい仕事についたシンガポールの友達の、

「It's been five months now, and I find it alright.」(転職して5か月たったけど、特に問題ないね)

という言葉にすごくハッとさせられた。

彼は、「alright」とだけ言っている。大丈夫、問題ない、のような。

「上司が良い人ですごくやりやすい!」とか、

「同僚と仲良くていい感じ」とか、

「社会貢献している感じがしてやりがいを感じる」とか、

そういうことじゃなくて、

「普通に行って仕事できる、問題なし」

のような。

ドライといえばそうだけど、期待が無いので、感情が揺れ動いていない。安定している。ただ仕事して給料をもらえるってだけで良くて、それ以上を特に求めていない。

彼は感情的にめちゃくちゃ安定している人だ。怒っているところも見たことないし、ケンカしたこともない。

ちょっと考えてみると、「上司が良い人で~」っていうのは、ともすれば「この人はこんないいところがある、好き! きっとこんな素敵な人のはずだ、この人のもとで働けたら素晴らしい毎日のはずだ」なんていう期待にも変わりかねない。

そういう風に(勝手に)思って、あとでそうではない場面が出てきたとき、「失望、ショック、そんなことになるとは思わなかった」なんて思ってしまうのではないだろうか。

要するに感情が上がったり下がったり、ジェットコースターなのだ。

これに対して、この友達は最初から期待値を「alright」で設定しているから、無駄に変な期待をしていない。人間にもいろんな面があるということを分かっている。その人の好ましい一面を見つける日もあれば、好ましくない一面を見つける日もある、と分かっているのだと思う(って、これは私の、彼に対する期待かな??)。

一日がつつがなく終わればそれでいい、のような。

仲のいい同僚がいたり、上司が素晴らしい人だったらもちろんありがたいけど、それに自分の感情を賭けていないのだ。


それに思い至ったとき、私は、他人への期待値を上げすぎていたかもなと思った。

些細なことで喜びや悲しみを感じてしまうたちなので、感情曲線はなかなかフラットにずっといられないけれど、少なくとも自作自演のジェットコースターは防げるかもしれない、心がけ次第で。

そう思った。

安定した心を目指そう~~「alright」で全然OKなのだ。



9.12.2026

シチリア料理リカータ

シチリア料理リカータに行ってきました〜

量が謎すぎてどれだけ頼めばいいのか分からず…探り探りで頼みすぎた感があったけど、どれも本当に美味しかった!


スイカ、トマト、モッツアレラチーズのスープ。驚く組み合わせだけれど、意外に美味しい。


マグロのパン粉オーブン焼き。マグロとは思えない、ステーキのような肉厚感とジューシー感。うまし…。魚なのでもたれる感じもなくとてもよき。


シチリアのパン3種盛り。


そしてハーフ前菜。これでハーフ?! 前菜とパンでけっこうお腹いっぱいなんですけど…!


イワシのコンフィとトマト、松の実、レーズンの入ったパスタ。トマトの味が強すぎず、イワシがしっかり主張してくれてて美味しい……!!


そしてポークグリル。豚肉とは思えないほどの赤身肉感。しかも柔らかい。低温調理かな、と話しながら。赤身は焼くとバザバサで硬くなるので、調理方法がいいんだろなーーすごいー


前菜についてきたカリカリスティックと、退店時にチョコレートまでいただいた。シチリアのおおらかさが分かるような感じ〜

決してお安くはないけど、たまには、というか経験としていいのではーと思います!


9.02.2026

☆最近行った美味しいお店☆

三条京阪あたりを散策する機会がちょいちょいあり。

 〇LOB COFFEE HOUSE

木のぬくもりと間接照明、美味しい自家焙煎コーヒーの香り、自家製ジャムまで、五感で味わえる隠れ家的カフェ。地元客・リピーターに愛されてます。

https://maps.app.goo.gl/b7bZaVhCKnheUdby6


〇中華焼肉 珉

地域密着型の、家庭的でゆっくりできるお店。料理も美味しく、焼肉以外にもメニューが豊富。

https://maps.app.goo.gl/1AkJtSu1xQ16SBnc7


〇アジアンキッチン Lotus

東南アジアの情緒が漂う。定番のタイ料理からちょっと珍しいメニューまで揃っています。

https://maps.app.goo.gl/uDZ8su3jSeiWiQnW7


〇Boulangerie Oshow

米粉コッペパンのサンドイッチのお店。京風の具から定番のあんバターサンドまでどれも美味しい!

https://maps.app.goo.gl/VjvXSc9aJTDvpP8L7


〇中国料理 東北家

美味しい中華料理屋さん!四川料理と書いてあるけど辛くないものもたくさん。メニューが多い、ボリュームも多い。

https://maps.app.goo.gl/p7VDDBSp8UJJtmwE8


〇スペインバル シドラ Sidra

ランチの焼肉丼がとても美味しくリーズナブルでした。夜はお酒もおつまみも充実しているようです。

https://maps.app.goo.gl/7z7i3CV4VsaJFwAs5

8.06.2026

Training to explain things logically and concisely in English

 My original explanation

The range of the QTL for Ca on Pv04 is 33 Mb long. One chromosome is typically about 50 Mb long, so this QTL is taking effectively three-fifths of the whole chromosome. However, when I visualize it, it looks much shorter. That is because the visualization is based on the genetic distances, not physical distance. The QTL that spans 11-44 Mb is only 5 cM long because it is in the middle of the chromosome, where very few crossovers happen. So, that is why the discrepancy between the QTL range based on the physical position of the markers and the visualized range between them based on the genetic distance appear so different. 

Improved version:

The QTL for Ca on Pv04 spans 33 Mb. Because a chromosome in common bean is typically about 50 Mb long, this QTL covers roughly three-fifths of the chromosome. However, it appears much shorter in the visualization because the plot is based on genetic distance rather than physical distance.

Although the QTL extends from 11 to 44 Mb, it spans only 5 cM. This region is located near the middle of the chromosome, where recombination is infrequent. As a result, a large physical interval corresponds to a relatively short genetic distance. This explains the apparent discrepancy between the QTL interval defined by the physical positions of the markers and its visualized length based on genetic distance.


Training for me

Your underlying reasoning is already strong. The main issue is not logic itself, but compressing the logic into a cleaner sequence and choosing more precise scientific phrasing.

The most suitable training for you would focus on four areas.

First, practise explaining one idea in a fixed causal structure:

Observation → explanation → mechanism → conclusion

For your QTL example:

  • Observation: The QTL spans 33 Mb but looks short in the figure.

  • Explanation: The figure uses genetic distance, not physical distance.

  • Mechanism: Recombination is infrequent near the chromosome centre.

  • Conclusion: A large physical interval can correspond to a short genetic interval.

This structure suits you because your original explanation contained all four elements, but they were partly repeated and distributed across several sentences.

Second, practise separating the specific case from the general principle. A strong scientific explanation often moves like this:

  1. State the specific result.

  2. State the general principle.

  3. Apply the principle back to the result.

For example:

The QTL spans 33 Mb physically but only 5 cM genetically. Genetic and physical distances are not proportional, particularly in regions with low recombination. Because this interval lies near the chromosome center, its large physical span corresponds to a short genetic distance.

This pattern is especially useful in presentations and discussions because it helps the listener understand not only what happened, but why the same phenomenon may occur elsewhere.

Third, practise replacing conversational expressions with standard scientific verbs and nouns. Your English is understandable, but some phrases are translated too directly from spoken reasoning.

Examples from your draft:

  • “is taking three-fifths” → “covers roughly three-fifths”

  • “very few crossovers happen” → “recombination is infrequent”

  • “looks much shorter” → “appears much shorter”

  • “the discrepancy … appear so different” → “this explains the discrepancy”

  • “the range of the QTL” → “the QTL interval” or “the QTL spans”

A useful exercise is to build a personal phrase bank organized by function:

  • describing extent: “spans,” “covers,” “extends from”

  • explaining causes: “because,” “due to,” “as a result of”

  • describing relationships: “corresponds to,” “is associated with,” “does not scale proportionally with”

  • interpreting figures: “appears,” “is represented as,” “the plot is based on”

  • concluding: “This explains why,” “As a result,” “Therefore”

Fourth, practice removing sentences that merely restate the same relationship. Your original version explains the physical–genetic distance discrepancy several times:

it looks much shorter
the visualization is based on genetic distances
it is only 5 cM long
that is why the discrepancy appears different

All are relevant, but the final sentence repeats what the previous sentences have already established. A useful editing test is:

Does this sentence add a new fact, explain a mechanism, or draw a necessary conclusion?

If it does none of these, delete or merge it.

A training routine particularly suited to you would be:

  1. Write the explanation naturally without restricting yourself.

  2. Label each sentence: observation, evidence, mechanism, interpretation, or conclusion.

  3. Remove repeated labels containing the same information.

  4. Rewrite the explanation in three sentences.

  5. Rewrite it again in one sentence.

  6. Explain it aloud without looking at the text.

For your example, the three-sentence version might be:

The Ca QTL on Pv04 spans 33 Mb physically, covering roughly three-fifths of the chromosome, but it appears much shorter in the visualization. This is because the plot represents genetic rather than physical distance, and the 11–44 Mb interval spans only 5 cM. Because recombination is infrequent near the chromosome centre, a large physical interval can correspond to a short genetic distance.

The one-sentence version would be:

Although the Ca QTL covers 33 Mb on Pv04, it appears short in the visualization because low recombination near the chromosome centre compresses this large physical interval into only 5 cM of genetic distance.

Your highest-priority training is therefore not basic English grammar. It is information structuring, scientific phrase selection, and compression. You already identify the relevant facts and causal mechanism correctly; the next step is learning to package them in the order most useful to the listener.


8.02.2026

盛夏にCafe Restaurant ASAL でイラン料理

ふと思い立って、イラン・ペルシャ料理を食べに行ってきた。

暑すぎて、目的地の途中にあるここでランチして涼もうという魂胆であった…。

いやしかし暑い。サウナである。自転車に乗るのはたぶん悪手。熱中症にホントに気をつけねばならない。。

牛肉、玉ねぎ、スパイスを入れて作ったケバブを香ばしく焼いたものに、サフランライス! ライスの上の部分がたっぷりの油でこんがりと焼いてあって、フライドポテトのようなギルティな組み合わせだけど美味しい…。暑さで食欲不振だけど食が進みました。ケバブもジューシーで美味しかった。

そしてヨーグルトドリンク。アラビア語の名前で思い出せないが…炭酸水、ヨーグルト、牛乳、ミントを入れた爽やかなお味!夏の定番だそう。(ん?イランって夏しかないのでは?と思ったら、明確な四季があるようだ…!) 砂糖はたぶん入っていなくて、甘くなくて酸っぱくて美味しかった。ヨーグルトなのでお腹ゴロゴロも多分ないだろうし… 発見でした。






7.30.2026

ジジのお世話大作戦 ーお留守番猫ちゃんをなだめつつ、猫のいる暮らしを体験してとろけました

帰ってきたら猫がいる、在宅ワークで猫がいる生活を体験しました…

友人が旅行で一週間留守にして、その間、飼っている猫ちゃん「ジジ」はお留守番する、というので、3人でチームを組んで、交代で猫ちゃんのお世話しに行った。

ジジは、実は私が以前動物愛護センターでボランティアしていた時に引き取ってもらった子で、私も子猫時代にセンターでお世話していた。からの、大人猫になって、家族が見つかって、幸せに暮らしているところで再会、ということになったので、すごく嬉しかった~

動物愛護センターで子猫の時から育てられた猫たちは、たいてい人に慣れているのでとても人懐こい。ジジも同様だった。

なんでも、友人一家が愛護センターに猫を選びに行くときに、譲渡室で、子猫がたくさんわらわらしている中、ジジは友人の肩に乗ってきたのだそうだ。それで心を射抜かれた一家は、「うん、君だ」となったらしい。肩に乗ってくるなんて、ピカチュウのようですな。ジジのアピール作戦大成功、友人一家の新しいメンバーとなったそうな。

動物シェルターで、人間が動物を選ぶのではなく動物が人を選ぶ、という動画を見たことがある。感動ものだ。一列に並べられた椅子に里親候補の人たちが座っており、保護犬や保護猫がその前に放たれる。でも人間は、声をかけたり触ったりしてはいけない。犬ちゃん(あるいは猫ちゃん)に、愛情こもった視線を向けながら、じっと待つのだ。犬ちゃん猫ちゃんは、「君の家族を見つけてごらん」の言葉をきちんと理解し、人間たちを見つめたりにおいをかいだりしながら、最終的に一人の人に顔を押し付けて「あなたです!」と選ぶ。選ばれた人は泣き出さんばかりに歓喜し、その子を全身で受け止める。そういうエピソードを思い出した。

ほぼ同じ感じで家族をゲットしたジジは、可愛いがられているんだろうなぁ…とよくわかるお宅で、ニャーニャー鳴きながら待っていた。

普段大人数の家族がいることに慣れていて、初めてのお留守番。やはり寂しいんだろうなと思った。

玄関に続くドアのそばでしきりに鳴いていたが、私の姿を見るなり、「この人じゃない」とばかりに玄関のほうを見てまた鳴き始めた。やっぱり家族の人じゃないってわかるんだな。

一日目は、私の滞在時間が短かったので、ごはんをあげてトイレ掃除して、オモチャで遊んで、という感じ。ハンティングゲームを永遠にしていた。私がしゃがんでいる足の間に入ってきて獲物を狙う。知らない人への警戒心とか何もなくて可愛い。番犬(番猫?)にはならないけど、可愛い。

一回、全身の力を込めてすり寄ってきて撫でて撫でて、ってしてきたのもすごく可愛かった。撫でられるのも自分の気の向いたとき、というのがすごく猫らしい。

帰る時はまたニャーニャー鳴いて、「帰らないで」アピールをされた。寂しいよね。交代で人が来る約2時間の間以外は、一日ずっと一人だもん。うぐぅ……。後ろ髪を引かれまくりながら帰った。

なので二日目はもっと長くいてあげようと思い、パソコンや勉強道具を持参した。相変わらず、玄関に続くドアの前でニャーニャー鳴いて待っていた。今日は長くいてあげるからねーと声掛けしつつ。すり寄っては離れ、抱っこもお気に召さず、ちょっと拗ねているような感じもした。留守番4日目となっていたので、ストレスが溜まっているのかもしれないなと思った。動物を飼うと旅行とか難しくなると聞くけど、本当にそうだなと思った…。

美味しいベーグル屋さんが近所にあると聞いたので行ってみて、クリームチーズ&サーモンサンドを買った。それを私が目の前で広げても、ジジは興味を示すものの、手を出したり食べようとしたりすることもなく、とてもお利口。

そして、私が机の上にパソコンを広げると…! 本当にもう、条件反射のようにそこへ来て、キーボードの上にどっかりと座る。来た来た来た。まるで猫ホイホイ。まだ何も作業を始められないうち、キーボードがまるごとジジの大きな体に占領され、奇妙なアルファベットの羅列が入力され始める。そして、Shiftキーが連続して押されると出るエラーみたいなのまで出た。これが世に聞く猫ハラかぁーーーと、初めての体験にうっとりしてしまった。ジジの飼い主さんに後で聞いたら、「それ、よくするんだよね」と言っていた。可愛い…。これをしたら構ってもらえると知っているのだろうか?? キーボードを占領されて仕事にならないのでとりあえず撫でる。ジジの思うツボだと、分かってはいるのだが。黒々した毛並みが美しい。床を転がったりしている全身だけど、「ホコリが…」とかよりまず、可愛いが勝ってしまう。猫は自分の魅力をおそらく知っているであろう、賢い生き物である…。

PCに座り、「何か問題でも?」と言いたげな視線。



とりあえずPCにロックをかけ、愛でる。本当に仕事にならない笑。

紙ならいけるかと思い、今度はノートとペンを机の上に広げてみた。すると…! 今度はそのノートの上にどっかりと座るではないか。ノートも猫ホイホイになる。またしても勉強できない。ジジの完全勝利であった。思う存分なでなでし、猫吸いもし放題なので、もはや私も楽しむことに専念した。猫は無臭に近いけどほのかにいい香りがする。うーん、最高。

最終的に、私が持ってきていたPC用のフェルトケースを置いたらそこにどかりと座ってくれた。長方形で周囲と色が違うものなら、とりあえずそこに座ってみたくなるのだろうか…? 箱に入りたくなるような感じで。一瞬フェルトで爪を研ぎ始めたが、「そ、それだけはやめてー」と言ったらやめてくれた。お利口。かくして、30 cm隣でジジが寝ている状態でPC作業ができた。至福の時間だった。猫がいる在宅ワークの生活ってこんな感じなんだな。これはたまらないなあーー。しかも、寝ているところを撫でると小さく「ミャン」とか反応してくれるのが愛い。猫もなんだかんだ、人の気配が恋しいんだなと思った。


ノート、ペンにも興味津々!



数時間も経つと、ジジは人との時間を十分に摂ったと思ったのか、少し離れた本棚へ移動。私の姿が見える場所ではある。そこでまたお昼寝。きっとそこでいつも寝ているんだろうと思われるような、ジジのスペースが開けられている本棚だった。私がトイレに行ったりキッチンへ行ったりすると目で追いかけたりついてきたりする。か、かわゆすぎだ…。

しかも、その本棚で寝ている間、ジジの手を撫でると、そのまま私の指を両手で掴んで昼寝を続けるではないか! 人の手を握って寝ていたいとは…! 人間の赤ちゃんも顔負けである。なんて可愛いんだろう。文字通り心臓がギュン!となった。

ついに来た夕方だったが、「帰らないで」アピールは前日よりは弱かった気がする。満足してくれたのだろうか。

ときめきっぱなしの「ジジのお世話大作戦」であった…。

ジジが幸せに暮らしていることも嬉しかったし、私のことを覚えているのかいないのかわからないけど、めちゃくちゃ懐いてくれたし、ジジの寂しさを癒すのに貢献できたことで、私の心もほくほくの2日間だった。

ジジは無事にその後家族と再会し、きっとちょっと拗ねながらもすぐゴロニャンして、日常が戻ってきたのだと思う。

貴重な体験で、非常にありがたかった。全世界の保護犬・保護猫に幸あれ。