英国の陶芸家、芸術家のバーナード・リーチ氏と、彼の生涯、芸術家仲間との関わりのお話。
民間の陶工が作る、日常で使えてかつ美しい陶芸を民陶とよび、その価値を見出した。今から100年くらい前の話で、第二次世界大戦を挟んでいる。当然、船でヨーロッパと日本を行き来したりしている。日田の小鹿田に、小鹿田焼の視察をしに初老のリーチ氏が来た場面から始まるが、お世話係を仰せつかった沖高市は、実はリーチに師事した沖亀之助という陶芸家の息子だった。メインの物語は、沖亀之助氏とリーチが出会い、高村光太郎、柳宗悦、濱田庄司らとも親交を深めながら、日本と英国の芸術の交流を深める架け橋にならんとする。明治、大正、昭和の激動の時代に、よく来たし、よくそこまで活動したなあと思う。
心理描写が美しい。何度も読んでしまう。言外の心の通い合いも描かれる。「見つめた」「見つめ返した」のような。
なにぶんリーチ師の一生が書かれているので、話の進み方が速い。それから二年の月日が流れた。とか、いきなり、見習いだった登場人物が有名な陶芸家になっていたり。ここから早送りー感があったなー。でも、陶芸については私はほぼ知識ゼロだったので、小鹿田焼など陶芸の奥深さが少しわかって良かった。
以下引用 * * *
芸術について論じているときの三人には、響き合う音が流れ、ハーモニーが湧き出るようだ。
美しい言葉で編まれた詩のような、心豊かな音楽のような、やさしい絵の具の色合いのような。
P.167
* * *
「本来ならば巡り合うはずもないふたりが、同じ部屋にいて、テーブルを挟んで向かい合って、さあ、これからどうやって面白いことをしようか、なんて話している……まるで奇跡のようだと、私は思うよ」
p.200
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