6.09.2024

生命の暗号/村上和雄

高血圧を引き起こすホルモン、レニンを単離、遺伝子情報を解読した研究者による自伝的啓発本。

大腸菌のラクトース分解酵素が、普段はOFFになっているけれど、普段の主食グルコースがなくなり、ラクトースだけの環境に置かれると、ONになって、ラクトースを分解して生き延びることができるようになる、ことを例に出している。

でその主旨は、遺伝子をONにせよ、自分で決めたことなら、努力せざるをえない環境に行けば、遺伝子スイッチがONになって、今まで発揮できなかったような力を発揮できる。ということだった。自伝的なだけあって、自分の研究をどのように努力して進めたか、実力主義のアメリカでこんな刺激を受けた、云々…ということが書かれている。

生き物の細胞のほぼ全てに、すべての遺伝子情報が入っていて、OFFになっていて発現していないだけだ、というのは生物学の人たちにはよく知られている。

頭脳とか知力の話になると、遺伝子をONにするというのはちょっと抽象的かもしれない。一つの遺伝子は一つのタンパク質の設計図であり、知力がどのタンパク質にどのように影響を受けているか、あまりわかっていないからだ。が、著者の言いたいことはまぁわかる…。

しかしーー、遺伝子をONにするには具体的になにをすればいいのか?というと結局のところ切磋琢磨して努力して奮闘するしかない。のだろう……。努力せざるを得ない環境、たとえば成果が出なければクビにされるアメリカの研究環境、なんかだと、遺伝子というかなんというか、もう頑張るしかない、という感じになる。

「生命のしくみがあまりに完璧すぎる。だから全能なる存在が生命のすべてを作った。」という主張に、私の友人の一人はこんな面白い反論をした。「すべての生命が完璧すぎるからこそ、一つの存在がそのすべてを作れたというのは無理がある。何十万人の生物学者が半世紀かけて一つ一つ解読していっている、でもいまだに解読途中である、そんな複雑な生態系が、たった一人に作れたはずがない。」

た、確かに…!!! 
彼はアンチ宗教なので、その影響もあるが、確かにな、と納得させられた。まあー進化論も、もっともらしい説明ではあるけれど、なにも確かなことは言えないんだよなあ、とか思ったり。

こういうことを侃々諤々話し合っているのが、京都学派っぽいというか、サロンぽいというか。おもろい。



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