11.25.2024

【ヒューマニティ】

英単語のHumanityとは、人間であること、人間性、博愛、慈悲、人情。そして人文学、人文科学(the Humanities)。

【ヒューマニティ】のセッションでは、文学作品を味わう経験ができました。

紫式部『源氏物語』
作者不明『平家物語』
シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』
鈴木大拙『東洋的見方』
ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』

平家物語の冒頭をCDで聴くことができたのは非常に興味深かったです。今日の感覚からするとゆっくりすぎると感じますが、当時のテンポ感に触れられました。ソローの、「落ち着いて簡素に生活を味わう」という思いとも関連があるかと思います。

源氏物語、平家物語は、物語ですが史実をもとにしていて、その時の貴族の教養レベルの高さ、運命に翻弄される昔の人々の悲哀を語っています。その時代と比較すると、今の日本はまだ自由がある。まだ問題は山積しているけれど、少しずつ進歩してはいる。とも思えました。

シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』では、扇動されやすい群衆心理が描かれていました。オルテガの『大衆の反逆』でも論じられていましたが、「本来政治は、自らに高い目標と倫理性を課す少数者にしかできない。しかし、凡庸な大衆が、自らの凡庸であることを認め、自分に高い目標を課すこともなく、権利を主張し始めた。その結果、大衆が大衆のまま政治にも参画し国家の辿るべき道を危うくしている。」それが、まさに演劇の中で表現されているようでした。レトリック、雄弁術の有力さが描かれています。内村のシーリー総長への心酔とも繋がるかと思いますが、1.言っている内容と、2.言い方は、全く別物である。にも関わらず、いかに混同されやすいか、言い方が内容に影響を与えやすいかを示しています。政治においては大衆となりやすい自分、また、リーダーとしては、少数者であることを期待される自分、と、様々な場面に置き換えて考えることができました。

時代や場所によって異なる価値観(何を重要視するか)、また、何が実質的に可能だったのか、どんな物事が人々を動かしていたのか、等について考え、考察することができました。歴史を踏まえて、今、地球全体の未来のために何が出来るかを考えたとき、

1.違う世界に飛び込み、新しい物事を知って刺激を得る
2.別の文化の中でも、似た考えの人と繋がる。そして共同で問題解決に取り組む

ということを、大阪大学の堂目先生は有言実行されていて、著作を読んでみたいし、なにか一緒にやりたいなと思うようになりました。

鈴木大拙の『東洋的見方』では、西洋の二分式の考え方、数的考え方とは全く異なる、禅の精神について触れることができました。「私はいる、でも、いないかもしれない。」「甲は甲ではない、ゆえに甲である。」という、わけのわからない物言いをするところにこそ、禅の真髄があるのだという。それは、言葉の危うさを禅の教えが語っているとも言えるそう。二分割、数字で数えていき、細分化して身動きが取れなくなっていくこと、そして人間が機械のように扱われることへの危惧がある。

禅の世界は、有も無も、あらゆるものが渾然一体として、溶け合って、かつ互いに障りのない(円融無礙 えんゆうむげ)、分離されない状態で存在する世界。しかもそれは静寂不動ではなくて、石臼がぴょんぴょん飛び跳ねるような、全てが常に変化する世界であるらしい。そんな世界でこそ、人間の全貌は考えられるべきものであって、そうすることで人間らしい生涯が営まれるのだと、鈴木大拙は言っている、と私は捉えました。面白い…。「無は即ち有である」なんて、理屈では捉えられない所が面白いし、クセになる…。西洋的な二元論で語れないものもあるし、全てをそう簡単に「判った」と思ってしまいがちなことへの警鐘だとも思います。

ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』は、第一次世界大戦から第二次世界大戦まで、愛国心、ナショナリズムが高揚し、国益のための戦争が頻発する中で、道徳をどう考えればいいのか論じていました。閉じた社会というのは、原始的で、防衛のために作った集団で、集団の中で上手くやっていくためのいわば生存のための義務的道徳が生ずる。集団内の相手には実は無関心で、利他主義の限界を表している。それに対し、開いた社会は人類全体を含むもので、集団内の相手の福祉に関心があり、道徳は自発的である。それはおそらく理想郷であるのだが、閉じた社会は閉じたり開いたりしながら、少しずつ拡大を続けていくしかない。このあとの後半部分では宗教や神秘性も論じられて私にはよく理解できなかったけれども…、「人類は自分の未来が自分自身次第だということを充分に知ってはいない」というところにはどきりとしました。

いやはやーー、濃いセミナーです。

もっと早く出会いたかったと思う古典がたくさん!!

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