5.30.2024

七月七日 ケン・リュウ 藤井太洋ほか 小西尚子 吉沢嘉通 訳

コワーキングの方おすすめ、SF風の短編小説。

全体的に宇宙のテーマ、そして韓国、それも済州島の伝説をもとにした物語が多い。

付き合っている女の子どうしが、七月七日に星空を飛び、織姫と彦星に出会う話、物理学会で意気投合した研究者どうしが探査ドローンを飛ばす話、女の子たちが巨人化してしまう話、宇宙にケーブル一本で探査に行く「潜り手」の話、翼をもって生まれ、英雄になったけれど心が幼く独裁者になってしまった子供の話。などなど…。物語の進展が速い!ので、逆に一気呵成に読み終わってしまわないと何が何だか、ということになる。SFで現実離れしている設定なのに、数ページで物語の世界を理解し、話に入って行けるように書かれてあるところは、さすが短編小説家たち…といったところです。

韓国・中国の作家さんが買いていて、それぞれの母語で書いている、もしくは英語で書いている、そしてそれらが日本語に翻訳されているので、もともとどの言語で書かれていたかも知ると興味深い。以下、気に入った部分の引用。

「わたしは自分たちの物語に、この一年に一度の逢瀬のために全人生を送っているという考えに慣れきってしまい、自分がなにを欲しているのかについて真剣に考えてこなかったのです。わたしは自分自身の伝説になってしまっていたのです。自身に語る物語がときに自分たちの真実を見えなくするのです。

*        *        *

わたしたちは溺れるのを恐れているかのようにたがいにしがみついてきましたが、実際には、相手を先に進ませないように押さえつけていたのです。

「そんなわけでわたしたちはそれぞれ先へ進み、悲しみだけでなく、別の愛を、別の喜びを得たのです」

七月七日/ケン・リュウ


「落胆するのも無理はない。そなたがこの地を大いに好んでおるのも重々承知のうえだ。今回の競争に全てを賭けていたのもな。しかし、我らの願いがこの世のすべてではない。無念であろうが、いま我らの望むとおりに行動したら、後に必ず後悔することになる」

不毛の故郷/イ・ヨンイン



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