6.05.2011

「マドンナ」


奥田英朗さんの小説。ばりっばりの体育会系営業マンたちを主人公にしたオフィスストーリーでとても面白かった。組織の長所、短所とか、旧習に拘束されるのを嫌う一匹狼とか、期待を背負って部長業務をこなす女性とか、オフィスの人間模様が克明に、しかも深刻にならないよう描かれている。

以前会社人間の男性と、専業主婦の女性とで成り立っていた時代があって、その流れが変わろうとしている今、そうやって生きてきた人たちのなかには、潮流の変化に対応し切れていない人も多いだろう。それぞれの価値観をもって、ぶつかっている。印象に残ったのは、「冒険をしなかった人は冒険者が憎い。自由を選択しなかった人は自由が憎い」という妻の一言。それなりの大学にいって会社に滅私奉公するという人生しか知らず、ダンサーになりたいという息子を認めようとしない夫に、彼女が発した言葉だった。そのとおりだと思う。自分の持っていないものに嫉妬する気持ちだ。大人が社会の厳しさを教えていくのは大事だけど、それと頭ごなしに子供の夢を否定するのは違う気がする。夢に挑戦する息子を応援して、だめだったらここに帰ってくれば良い、そこから考えよう、と言ってもらえれば子供は安心するのではないか。そうしたら子供も、結果は全て自分にかかってくる、それでもやりたい、と思って、責任感をもって全力を注ごうと思うのでは。「失敗」しないように、親がすべてお膳立てするのは子供の自律のためにも良くない。子供が何を求めているか、理解するのはきっと難しい。受けた教育も考え方も違うし、違う人間なのだ。

それにしても、権力構造とはあれほどえげつないものなのか。。どちらの部長に気に入られるかとか、ここで抵抗しておかないと面目が…なんて計算をして動く主人公がたくさんいる。そして、自分の権力を誇示したく、既得権益にしがみついていたい人のなんてリアルなこと! こんな人は見たことないけど、実際いるんだろうなぁ。

ムラ社会で、規則はあくまで基本、暗黙のルールとか、伝統とか、周囲に合わせるとか、そんな見えない行動規範?がたくさんある。それこそが高い生産率と品質を生み出し、日本を高度経済成長に導いたんだ、と外国の人は言うけど。残しておきたい伝統もある。しかし、残さなくていいものも確実にある。こういうのって、実際にいつかはなくなっていくもの? すごく根深くて、こちらを切ってもあちらからまた芽が生えてくるみたいなことが繰り返されている気がする。……それでも、50年前にはきっと考えられなかったこと(男女の初任給が同等とか)が今は普通になっているから、今から50年くらいたったら、もっとましになっているのかもしれない。その変化のために、今から地道に少しずつ、改革路線のレールを敷いていかねば。一つ一つは小さくても。

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