1.10.2016

「わが心のジェニファー」 Jennifer On My Mind



日本好きな彼女のお願いで、日本にはあまり良いイメージを持っていなかった米国人青年が、電話もパソコンも持たずに初めての日本を旅するという物語。人生についての真面目な考察もありつつ、そこかしこに喜劇がちりばめてある。飛行機の中で笑い声をあげそうになるのを何度こらえたことか…。浅田さんの軽妙な筆致に感動するばかりである。

読み始めてすぐに、「ああ、これは…あと3時間もしたら読み終わってしまうだろう。この面白いストーリーが終わってしまうなんて残念だ」と思わせられる本というのはなかなかない。これはそんな貴重な作品の一つである。

祖父が第二次大戦で日本軍と戦い、その経験をよく聞いていた青年。恋人ジェニファーの日本好きに戸惑う。彼のような、特に外国に興味もない一般的なアメリカ人が日本を訪れたらどう見えるのか、なかなか私の知見と合うところもあり面白い。

日本の会社で働くという異文化体験をしている私にとって、日本の職業に対する姿勢や考え方などについての青年ラリーの感慨や驚きはよく理解できる。よく言えばプロフェッショナル(新幹線をものの数分で綺麗にするSWATよろしくの清掃員たちの、何と高潔なことか!)、悪く言えばサービス過剰(バスの遅れは運転手のせいではないが、運転手は必ず謝る)。。

一方アメリカも華やかで自由が謳歌されているというだけでなく、暗部もある。弱者に対する社会からのバックアップは乏しく、成功と失敗があるだけ。仕事は仕事で、自分の職掌範囲以外のことはしない。(良かれと思ってしたことでも、訴えられるなんてこともあるし…。)

どちらがいいということもなくて、多分どちらもそれなりに長所と短所を抱えていて、どちらの文化にいる人でも、それに適応していかなければならない、ということだろう。

日本を違う視点で見てみたい方、単純に笑いたい方、ちょっと感動したい方、おススメです!!


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